Article header library 128909  1

IoT機器の通信はどれを選べばいいか?[出張版 APS実験室]

IoT機器に無線通信を載せたい!だけど、どう始めたらいいのか?どこから探せばいいのか?そういう方、結構多いのではないでしょうか?

こんにちは!APS実験室室長の浦邉です。今回は、IoT機器開発に欠かせない、ワイヤレスについてご紹介したいと思います。IoT機器開発で、無線モジュールを使う時に、こんな声を耳にしませんか?

Article header library 128909 pic01  1

APS実験室 [室長] 浦邉 康雄

「IoT機器を作っているが、どの無線通信を採用すればいいの?」
「無線は使いたいけど、バッテリーは長持ちさせたい!」
「時々通信する程度でいいんだけど、どれを選べばいいの?」
「スマホと通信するには、Wi-Fi かBluetooth® しか選べないのかな?」
「技適ついてないとだめなの?」
「技適って何?」
「無線モジュールってどうやって使うの?」

今回は、こんなユーザーの声を聞きつつ、


の2つのポイントに絞って、それぞれの無線方式の特徴と使い方などを解説します。

知っておきたい無線の知識

無線とは・・・と行きたいところですが、難しい話よりも無線技術を使う上で、守らなければいけない決まりがありますので、まずはその点を理解するところから始めてみましょう。

無線技術を利用するには、法律が存在することを忘れてはいけません。
違法とは知らずに電波を使用した場合や、「ちょっと使うだけ」といえども、法律により罰せられますので、最低限の知識は備えておくのがいいでしょう。

電波法と技術適合(技適)について

無線技術を導入しようと思ったときに考慮しておきたいのが、「技術適合」です。
技術適合は、電波法に定められている条件をクリアしたものについてのみ、与えられる証明になります。電波法を遵守することはもちろんのこと、第三者機関による認定が必要になります。認証機関により認定されなかった場合は、販売時期をずらすなどして、十分な対策をして製品リリースする必要があります。
とはいえ、購入できるモジュールの多くは、これらの点をクリアしているものが多いので、安心して使用できます。Macnica Mouserでも技術適合や国内使用可否について掲載しているので、是非確認してみてください。

ということで、これから無線モジュールを使ってみようという方は、これからご紹介する無線モジュールおよび評価キットを使うことから始めて行きましょう。Wi-Fi/Bluetooth/Zigbee など色々なモジュールを紹介します。また、技適の認定を受けていない無線モジュールをやむなく使用する場合は、電波暗室など外部に電波が漏れない環境で動かす必要があります。これも非常に重要な点です。

電波法と無線出力

無線モジュールは、使用する周波数帯にかかわらず、使用可能な出力電力[W]が決められています。電波法内では、「空中線電力」と表記されています。この空中線電力はいわゆる「アンテナ出力」であり、電波送信時の電力になります。

各製品異なりますが、このような表で記載されています。
無線規格 表記方法
Bluetoothモジュール 出力電力 +3dBm
Wi-Fiモジュール 出力電力 IEEE802.11b:15dBm ±2dBm
Sub-Gモジュール 出力電力 Active Mode TX +10dBm

Wではなく「dBm」になっているのは、1mWを基準とした時のdB値で表しています。

  • 1uW = -30dBm
  • 1mW = 0dBm
  • 1W = 30dBm

技適について

次に重要なのは、国毎に無線技術が定められています。これを遵守する無線モジュールを使用しなければいけません。これがいわゆる「技適」です。「技適」は、「技術基準適合」の略ですが、「技術基準適合証明」と「技術基準適合認定」という2つが存在することを覚えておきましょう。

「技術基準適合証明」が一般的に言われている「技適証明」です。この(⚡︎〒)のようなマークが必ず無線モジュールについています。

技適マークについてのQ&A(総務省 電波利用ホームページ)

ご自身で、無線モジュールを作る際は、回路図やシステム構成などを所轄の電波管理局に申請及び登録をする必要があります。

日本国内における電波は、総務省で監理しています。(総務省 電波利用ホームページ)

無線技術を利用する上で、ルールを守るということは最低限のマナーです。IoT機器開発の際、どんなに魅力的なスペックを掲げられても、技適マークが取れていない無線モジュールを選択することは決してしないことです。

マクニカ オンラインサービスでも、技適マーク取得までの道のり記事があります。参考になりますよ。

技術基準適合証明取得までの道のり 第1話「技適を取ろう」
技術基準適合証明取得までの道のり 第2話「書類の準備」
技術基準適合証明取得までの道のり 第3話「試験実施」

ぴったりな無線方式

IoT機器で1番のKeyになるのが、センサと並んで無線通信方式なのではないかと思います。

無線は、線をつながなくても通信できるため、様々な利用形態があります。IoT機器開発の現場でも、どの無線を利用するのかは、運用方法を含め重要な決め手になります。

ここでは、簡単に「無線」と「帯域」についておさらいしておきたいと思います。

無線とは

そもそも無線とはなんなのか?を簡単に説明しておきます。

無線は、電磁波を利用し、搬送波と信号波を掛け合わせた「変調」を利用して、空中にエネルギーを放射します。これを「送信機」といいます。
送信機に対して、空中のエネルギーを受け取る「受信機」があります。変調されたデータを戻す「復調」という仕組みが入っています。

テレビやラジオも、搬送波という信号に音声や映像の信号を乗せて(変調して)発信しています。それを受信機で「復調」したデータから映像と音声を取り出しています。
共通していることは、「電磁波」を利用しているということです。いろいろな無線の周波数があり、数MHzから3THzの範囲で、免許が必要なものから、免許不要のものまでさまざまな帯域が存在します。

詳しくは、総務省電波管理局を参考にして下さい。
周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴(総務省 電波利用ホームページ)

帯域とは

無線に関わっていると、「帯域(たいいき)」という言葉が出てきます。英語で言うと「BandWidth」(バンド幅)も同義です。

これは、一つの特定周波数を中心に、どのくらいの幅が有効であるかを示す指標です。この幅が広いと、多くのデータを送受信できると考えてください。その代わり、使えるチャンネル数が減少します。逆に、この幅が非常に狭いと、多くのデータの送受信には向いていないが、チャンネル数がたくさんあると言えます。

ちょっと古い資料かもしれませんが、Wi-Fi のIEEE802.11b の場合、約22MHz の帯域幅を利用しています。2.4GHzに対して、22MHzはとても狭い幅(比率では、0.8%程度)です。2401MHzから2499MHzの幅で、中心周波数を少しづつずらしながら、14ch分の帯域幅を利用しています。

Article header library 128909 pic02  1

Wi-Fi (IEEE802.11b) の帯域幅

Wi-Fiに限らず、他の無線方式も、ほぼ同じような構成になっており、バンド幅が小さく細切れになっている代わりに、チャネル数が多いといった仕様になっています。また、2.4GHzは世界中で利用できるため、Bluetooth やZigbee、Thread、SmartMesh などの多くのプロトコルが存在します。

最近のIoT機器で、LPWA とかナローバンドとか聞いたことありませんか?これは、この帯域が狭いですよ!ということなのです。狭い分、送信する電力も小さくて済み、小さな細切れデータを送るのに向いていると言われています。LoRa とかSigFox とかNW-IoT などの規格があります。

IoT機器で活用されている無線技術

IoT機器の無線技術の代表的なものは何かと考えたところ、やはり身近な「スマートフォン」なのではないかと思います。電話機能としてのLTEや3G/4G回線を始め、Wi-Fi、Bluetooth など常に最新の規格が盛り込まれた製品が次から次へ投入されています。

もちろん、IoT機器でLTE回線を利用するシーンもだいぶ増えてきましたが、通信料と消費電力が気になるところです。IoT機器としては、なんといってもスマートフォンにデータを送りたい場合の方が、利用シーンも多いのではないでしょうか?

そうなると、有力なのがWi-Fi やBluetooth といった規格になります。この2つを持ち合わせていないスマートフォンを探すのが難しいくらい一般的になりました。なので、ここでは、W-Fi、Bluetooth など免許も不要な2.4GHz帯の無線技術について簡単に解説して行きます。

Wi-Fi

Wi-Fi は、2.4GHz を中心とした無線通信技術の代表的な方式です。帯域のところでも説明しましたが、2.4GHz 以外に、5GHz も含まれています。IEEEの標準化もされており、IEEE802.11.x として多くの系譜があります。デバイスの進化も著しく、伝送能力を落とすことなく省電力化にも力を入れており、各社から多くのラインアップが揃っています。

現在では、IEEE802.11b/g/n をサポートしており、接続性といった意味では、いちばん普及している規格をサポートしているので、非常に使いやすくなっています。かつては11Mbps といった通信速度から、最新の規格ではIEEE802.11axといった6Gbpsを超えるものまで出てきています。Wi-Fi は、PCやスマホに搭載されるのが一般化し、もはや完全にインフラとしての地位を築き上げました。

そんなWi-Fi モジュールは、モジュール単体とすぐに評価がはじめられる評価キットがあります。
MOS(マクニカ オンラインサービス)内でも、今回ご紹介する4社の評価キットと無線モジュールが提供されています。

Wi-Fi モジュールは、通常シールドされたパッケージで用意され、技適マークも確認しやすいところにあります。マイコンとの通信は、UART、SPI、I2C、SD のいずれかが用意されています。これは、Wi-Fi に限らず、このあとご紹介する無線モジュールのほとんどがシリアル系のI/Fを持っており、提供されているAPIを通して、送受信すべきデータを指定する使い方になります。

Article header library 128909 pic03  2

Wi-Fi

主要ベンダー

Wi-Fi モジュールは、内部に暗号モジュールを持ち合わせており、改めて暗号処理を追加することはありません。WPA やAES など必要な暗号処理はモジュール内で完結しています。また、データの送受信については、API ポートを叩くものやAT コマンドでコマンドプロトコルに従ったデータ送受信のものがあります。

この辺りの実装上の違いは、内部に持っているマイコンがどのように処理するかによって異なります。SDK の有無やサンプルコードの有無など選考すべき点はたくさんあります。お試し程度であれば、Arduino のスケッチがあるとかMbed にサンプルがあるなど、ソフトウェア環境がどの程度整備されているか事前に把握しておくといいと思います。

Wi-Fi/Bluetoothコンボモジュール

最近では、Wi-Fi モジュール単体だけでなく、Bluetooth などの機能を併せ持ったコンボモジュールタイプも増えてきました。


Wi-Fiの電波をもっとハイパワーにしたい!

実際のIoT機器のPoC や設置現場など、市販のWi-Fi モジュールではどうしてもパワーがでないということもよくあります。

しっかり安定した電波を出してくれる心強いアナログフロントエンドを使ってみてはいかがでしょうか?Wi-Fi の帯域であれば、2.4GHzと5GHzに対応しているLX5591と、2.4GHzに対応しているLX5535 があります。

技適を取り直す必要はありますが、こういった情報は見かけません。是非、この機会にいかがでしょうか?


Bluetooth

Bluetooth は、Wi-Fi とおなじく2.4GHzを中心とした無線通信技術の代表的な方式です。

バージョンが上がるにつれ、使いやすさも向上してきました。Bluetooth4.0 と似た規格でBluetooth Low Energy (BLE) が登場し、対応したスマートフォンも一気に増えました。IoT機器の無線通信といえば、BLEと言えるくらい一般的になりました。

Bluetoothは、さまざまなパソコン周辺機器にも採用され、より多くの採用事例が豊富にある一方、うまく繋がらないといった相性があることも見受けられます。
また、BLEは、Andorid系の対応とiOS系の対応で若干異なることがわかっており、どちらかに対応しているとか、両方に対応しているとか、ソフトウェアにより対応機器が異なることもあります

Bluetooth は、簡単で使いやすい分、スマホのアプリはしっかり作らないといけない印象があります。Bluetoothもモジュールと評価キットが用意されています。評価キットから始めると、様々なプロトコルやBluetoothについて調査ができます。

MOSから入手してBluetooth/BLE対応のIoT機器の開発調査を始めてみましょう。Bluetoothモジュール自体の使い方は、Wi-Fi同様、UARTやSPIなどシリアル系のI/Fを介してデータの送受信を行います。

Article header library 128909 pic04  1

Bluetooth

主要ベンダー


Bluetoothの場合、SDKやサンプルコードが豊富に用意されているケースが多いです。各利用シーンに応じたGATの作り方など、各社異なる点はありますが、形状や開発のしやすさなども選択基準になるかと思います。

Zigbee

Zigbee は、Wi-Fi/Bluetooth とおなじく2.4GHzを中心とした無線通信方式です。2003-4年ごろから登場しました。現在でも利用シーンは多く、スマホにデータを送受信しないシステムにとっては、有力な通信方式です。

ホームオートメーションの照明制御やスマートロックなどと非常に相性のよい無線規格で、昨年にはZigbeeハブを標準搭載したAIスピーカーも登場するなど、市場としても非常に活性化してきています。

Bluetooth やWi-Fi に比べて、転送速度は落ちるものの、軽量なデータ通信方式が根強い人気があります。最近では、メッシュ形状を構成できるものが登場しています。

Zigbeeは、業務用機器の無線ネットワークシステムとして広く採用されています。PC とは専用のモジュールを利用して使う方法が一般的で、スマホへの搭載は見送られています。一般的には、Gateway機器にWi-FiやEthernetと併用することで、Zigbeeネットワークの情報を外部のサービスに連携させる方式が採用されています。

Zigbeeモジュール自体の使い方は、Wi-Fi同様、UARTやSPIなどシリアル系のI/Fを介してデータの送受信を行います。

Article header library 128909 pic05  1

Zigbee

主要ベンダー


ZigbeeもSDKやサンプルコードが豊富に用意されているケースが多いです。各利用シーンに応じたサンプルコードから派生させるのが、最も簡単な方法になります。

Thread

Threadは、Googleが提唱しているIoT機器通信規格の一つで、Zigbeeと同じ帯域を利用しています。Threadモジュール自体の使い方は、Wi-Fi同様、UARTやSPIなどシリアル系のI/Fを介してデータの送受信を行います。情報が少ないですが、筆者のサイトでもThreadを使ったコンテンツもあります。

APS実験室:Thread通信 (IoT無線規格) を解説

Article header library 128909 pic06  1

Thread

主要ベンダー


SDKやサンプルコードが豊富に用意されているケースが多いです。各利用シーンに応じたサンプルコードから派生させるのが、最も簡単な方法になります。

Sub-GHz

Sub-Gは、その名の通り、1GHz以下の帯域で無線通信を行う通信方式で、920MHz帯を中心に、主に電力メータ向けや産業機器向けに使われています。

広帯域を利用しているWi-SUNや狭帯域(426/429MHz)と呼ばれる特定小電力無線というグループや、EnOceanといった(315/868/905MHz)といった帯域も含まれます。
国内では、ARIB STD-T108として標準化されており、電力メータやECHONET liteの規格として利用されています。2.4GHzと比べると通信速度は劣るものの、電波の飛距離があり、反射や回析現象にも強く、チャネル数も多く安定した利用環境を求める業務用などから支持を得られています。

Sub-Gモジュール自体の使い方は、これまでのモジュール同様、UARTやSPIなどシリアル系のI/Fを介してデータの送受信を行います。

Article header library 128909 pic07  1

Sub-GHz

主要ベンダー


Sub-G通信用のSDKやフレームワークを提供しているところが多く、各利用シーンに応じたサンプルコードから派生させるのが、最も簡単な方法になります。

もちろん、ここのご紹介しきれていない無線通信方式も多く存在します。

例えば、LoRaやSigFoxといった狭帯域の通信回線や、SmartMeshなどMeshトポロジーに特化したネットワークや、Bluetooth5.0など進化した規格も益々増えてきます。

一つの無線方式にこだわらず、適材適所で無線モジュールを選択できるようにしておくことが賢明です。

まとめ

最後に、これまでご紹介した評価キットおよび無線モジュールをまとめてみました。同じベンダーでも、異なる無線モジュールを出している場合もあります。あなたの開発するIoT機器開発にぴったりな無線モジュールを探してください。
メーカー Wi-Fi Bluetooth Zigbee Thread Sub-G
Cypress
STMicroelectronics
Microchip
Texas Instrument
Silicon Labs
Microsemi ◯ (AMP)
ローム


おすすめ記事/資料はこちら

APS実験室 [室長] 浦邉 康雄

Article header library 128909 pic08  1

[室長] 浦邉 康雄

1995年 半導体商社で自社製品の開発に従事
2001年 SMSC(現Microchip)にて、Ethernet製品のFAEとして幅広い業務に従事
2010年 Altera(現Intel)に入社し、FPGAのFAEに従事
2011年 組み込み系RTOS(eForce)にて、営業技術としてOSの販売やコンサルなどを行う
2015年から現在のAPS実験室室長を務める。
ハード・ソフト・デジタル・アナログ・通信・電源など多岐にわたるコンテンツをエンジニア目線でわかりやすく提供しています。

著書
CQ出版でEthernet関係を中心に、 MbedやCortex-Mコアに関する記事を寄稿

関連タグ