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[水晶振動子の基礎講座] 発振条件と回路マッチング(回路解析)について

量産においては、水晶振動子自体にバラツキがありますし、回路そのものもバラツキがあります。
双方にバラツキがあっても、事前に回路マッチング(回路解析)を行って最適な発振条件を割り出し、その条件に見合った回路構成を行えば、量産段階でのトラブルを最少化出来ます。
ですから、新規の設計に入る場合は事前に回路マッチングを行うことをお勧めします。

ここでは、一般的なCMOS回路の場合の回路マッチングのやり方、そこで使われる用語や発振条件などについて説明します。

1. 負性抵抗(-R)

水晶振動子は電流を通し難くする抵抗の働きをするので、発振回路のICなどで水晶の抵抗成分を打ち消して発振を起動させる力(発振起動力)が必要です。この発振起動力(発振させるパワー)のことを負性抵抗(-R)と言い、単位はΩで表します。
負性抵抗が大きいほど発振しやすくなります。
(抵抗Rは元々マイナス成分で、その前にマイナスを付けることで全体ではプラスの力になる、と考えれば理解しやすいかと思います)

負性抵抗の値を求めるためには実際に水晶振動子を回路に搭載し、具体的に発振させて回路(IC)の持つ発振起動力を算出して求めます。その為にはその水晶振動子の等価直列抵抗値(ESR)と並列容量値(Co)が必要です。

複雑な計算が必要ですから、水晶メーカーに実際に測定・算出してもらうしか方法がありません。

2. 発振余裕度

発振余裕度とは、水晶振動子のESR値が規格値ぎりぎりの最悪である場合に、その回路(IC)がどれだけ余裕を持って発振させる力を持っているかを倍率で表したものです。その倍率は水晶を回路に搭載した時の抵抗値と、負性抵抗(-R)の比で表します。

水晶を回路に搭載した時の抵抗値のことを負荷時等価抵抗(Re)と言い、その値は通常、ESR値の1.2倍から1.3倍の値を示します。(水晶は回路に入れると抵抗値を増すということです)

水晶振動子を正常に発振させるためには、負性抵抗(-R)の値が負荷時等価抵抗(Re)の数倍以上なければなりません。つまり発振起動力が水晶の抵抗成分の数倍以上必要ということです。

倍率が大きいほど回路(IC)の持っているパワーが大きく、発振に余裕があるということです。一般的には、発振余裕度は5倍以上が推奨されています。
| - R | > 5 × Re
-R:負性抵抗
Re:負荷時等価抵抗
実際の回路マッチングにおいては回路を受け取った状態での発振余裕度を算出して、もし余裕度が少ない場合は負性抵抗を大きくする方法(あるいは発振余裕度を上げる方法)を検討します。
ところが回路のCの値、Rの値、負荷容量(CL)の値、ドライブ・レベルなどは相互に関連しているので、総合的に勘案、試行錯誤の上で最適条件を割り出す必要があります。

3. ドライブ・レベル

回路設計をする時は、ドライブ・レベル(水晶振動子の電流)にも注意しなければなりません。
水晶に過大な電流が流れると(ドライブ・レベルが大き過ぎると)スプリアスなどを起こし易く、発振が不安定になることがあります。また、ドライブ・レベルが大き過ぎると、温度特性において周波数や直列抵抗値の異常なジャンプ変動を起こすことがあるので注意が必要です。

ドライブ・レベルは回路にダンピング抵抗(Rd)を付けて、その値を変化させることで調整します。ドライブ・レベルを下げるためにはRdの値を大きくします。

また、C1、C2を小さくしてもドライブ・レベルは下がります。
しかし、Rdを大きくし過ぎると負性抵抗(-R)が小さくなり、C1、C2の値を変えると負荷容量や負性抵抗が変化します。周波数帯によって下表のようなRdの値が推奨されています。
周波数Rd(Ω)
6~8MHz2.7k
8~12MHz1.8k
12~15MHz1.0k

ドライブ・レベルや負性抵抗の値を確認しながら、Rdを調整する必要があります。

※負性抵抗の値が少ない場合はRdの値を小さくします。(ゼロまで落とす場合もあります)
※Rdをゼロにしても十分な負性抵抗が得られない場合は、C1、C2の値を下げて負性抵抗を大きくします。
※C1、C2の値を下げても充分な負性抵抗が得られない場合は、ESRの規格を厳しくする方法があります。それによって発振余裕度を改善することが出来ます。(ESRの規格を厳しくすると、単価に影響するので注意して下さい)
※それでも十分な余裕度を得られない場合は、ICを変更するなどの回路の見直しが必要なこともあります。

4. 回路マッチング(回路解析)

このように最適な条件で発振させるためには、回路基板上のCやRdの値をどうするか、水晶の負荷容量をどうするか、ドライブ・レベルや負性抵抗(-R)、発振余裕度はどうか、などいろいろな要素が絡み合うので、回路マッチングにより、最適な回路定数、発振条件などを検討し、その結果に従って回路設計をすることで将来のトラブルを最少化することが出来ます。

九州電通に回路マッチング(回路解析)を依頼する場合、下記事項をご確認ください。

※回路マッチング依頼の際は、電源を明示し、基板と回路図が必要になります。
※回路図には、外付けコンデンサの値やダンピング抵抗値を明示する必要があります。
※正常動作確認後、解析依頼をしてください。
※回路マッチングの費用については、購入条件によっては有償の場合もあります。

解析には1~2週間ほどお時間をいただいております。お預かりしたものは解析終了後、速やかに返却いたします。


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