Article header library 126021  1

LTspiceを使ってみよう - 出力過渡応答性の確認

はじめに

前回の LTspiceを使ってみよう-電源起動時の評価項目 では、一般的な降圧電源を例に出力オーバーシュート、
突入電流の有無についての確認方法を紹介しました。

LTspiceを使ってみようシリーズはこちら
LTspiceを使ってみよう-導入編
LTspiceを使ってみよう - 基本編
LTspiceを使ってみよう -DC-DCコンバータの動作確認
LTspiceを使ってみよう-電源起動時の評価項目

おさらいになりますが、DC-DCコンバータの評価項目には、一般的に下記4つの項目が挙げられます。

  1. 出力リップル電圧
  2. 変換効率
  3. 電源起動時の挙動(出力オーバーシュート、突入電流有無の確認)
  4. その他(SWノードの波形、出力の過渡応答性等)

前回記事では、「3. 電源起動時の挙動」についての項目を説明致しました。
今回は、LTspice シミュレーション機能の中で、「4. その他(SWノードの波形、出力の過渡応答性)」の確認方法について紹介します。

SWノードの波形について

ここでは、SWノードの波形確認方法について紹介します。

SWピンの波形は、"電源が正常動作を行っているかどうか" の指標として確認する事が多く、非常に重要なチェック項目となります。

前回記事でも例として使用したLT8640を用いて確認します。
仕様は、Vin=12V, Vout=5V, Iout=1A, fsw=2MHzとします。

Duty cycleの計算

スイッチングレギュレータは、内部のスイッチング素子がON/OFFを繰り返し、一定の出力を得る方式です。
この動作を高速で繰り返すことで出力電圧を規定値に調整しますが、1周期におけるON/OFF時間の比率をDuty cycleと言います。

まずは入出力電圧の仕様から、下記計算式で電源のDuty cycleについて計算します。

Duty cycle [%] = Vout / Vin

今回の仕様だと、Duty cycleは約41.6%(5 / 12)です。
※ここでは、これをオンデューティーと呼びます。
実際の波形を見ながらDuty cycleが正しいかを確認し、電源としての動作確認を行います。

SWノードの波形確認

それでは、下記手順でシミュレーションと波形確認を行っていきます。

  1. 回路図のSWノード(赤枠部)をクリックすると、SWノードの波形確認が行えます。

Article header library 126509 pic01  1

SWノードの波形確認

  1. 波形が確認できたら、次は1周期の時間について設計値通りか確認します。

スイッチング電源の1周期は、スイッチング周波数の逆数で求めることが可能です。
※今回はfsw=2MHzなので1周期は500nsです。

測定したい箇所をマウスホールドで左下に測定値が表示されます。
左下の値を確認すると、測定値は499.24nsとなり、ほぼ500nsなので正常動作と言えます。

Article header library 126509 pic02  1

1周期の確認

  1. 次はON時間の確認です。こちらも1周期内のON時間をマウスホールドすることで同様に確認します。

左下の測定値を確認すると、ON時間は211.07nsであることがわかります。
Duty cycle[%]は (Ton / T) ×100 で求めることが可能です。

(211.07ns / 499.24ns) ×100 = 42.3[%]

理論値の41.6%に対してほぼ同等なので、電源として正常動作であると判断できます。

Article header library 126509 pic03  1

ON時間の確認

このように、SWノードの波形を確認する事でDuty cycleを算出し、電源の動作確認を行う事が可能です。

電源ICによっては、「minimum on time」や「minimum off time」というDuty cycleに関する制約があるので、SWノードの波形確認は、電源の評価項目としても非常に重要です。

[おまけ1] 入力電圧を変更するとどうなる?

出力電圧は5Vで一定とし、入力電圧が8Vの場合、24Vの場合の2つの条件で違いを見てみます。

Article header library 126509 pic04  1

Vin=8Vの場合

  

Article header library 126509 pic05  1

Vin=24Vの場合

上記結果より、Vinが小さくなるとON時間は長くなり、Vinが大きくなるとON時間は短くなることがわかりました。

これは、Duty cycleの計算式によっても証明できます。
算出式は、Vout / Vin なので理論通りです。

他にもVoutを変更してみたり、条件を変えながらシミュレーションを行ってみると良いかと思います。

出力過渡応答性について

出力過渡応答性とは、急激な負荷変動に対する出力の応答特性の事を指します。
つまり、降下または上昇した出力電圧が設定値に戻るまでの時間や波形のことです。

電圧変動が大きいと、後段回路に影響を与えますし(例えばFPGAコア電源等は高精度が要求されます)、設定値に戻るまでの時間が遅ければ、システム全体にも影響を及ぼしかねません。

過渡応答性の確認は、電源評価の中でも非常に重要なスペックになってきます。
ここでは、LTspiceを用いて簡単に確認する方法を紹介します。

出力過渡応答性の確認

SWノードの波形確認の際と同様に、ここでもLT8640を用いた回路で説明します。
仕様はVin=12V, Vout=5V, fsw=2MHzとします。

出力過渡応答の確認時、負荷は抵抗器でも電流源でもシミュレーションが可能です。
電流負荷のパルス機能を用いた方がシミュレーションが簡単なので、ここでは電流源を用いた方法を紹介します。

それでは、下記手順でシミュレーションを行っていきます。

  1. 元々あったRloadを電流源に変更します。

画面上部のGUIより"component"を選択。

Article header library 126509 pic06  1

負荷を電流源に変更 1

  1. Select Component Symbol が表示されると、"load2"と入力。

Article header library 126509 pic07  1

負荷を電流源に変更 2

OKボタンで負荷のあった位置に挿入します。

Article header library 126509 pic08  1

負荷を電流源に変更 3

  1. 電流源の上で右クリックします。Current Source - I1 が表示されるので、"Advanced"を選択します。

Article header library 126509 pic09  1

電流源の設定 1

Independent Current Source - I1 が表示されるので、PULSEを選択し、I1[A]-Ton[s] 項目に下記の値を入力してください。

Article header library 126509 pic10  1

電流源の設定 2

  1. 最後にシミュレーションの実行時間を変更します。

上記で設定したパルス電流は1.5msで現れるので、「.tran 1m startup」のままではパルス電流が現れる前にシミュレーションが終了してしまいます。

変更方法は、「.tran 1m startup」のコマンド上で右クリック、Edit Simulation Command上でStop timeを"2.5m"に変更します。
※ここで、m(ミリ)を忘れずに入れるようにして下さい。

Article header library 126509 pic11  1

シミュレーション実行時間の変更

  1. 上記手順がすべて完了したら、Runボタンを押します。

シミュレーション終了後、OUT端子と電流源を左クリックします。

2つの波形を確認できたら、過渡応答部分をズームし、Autorangeをクリックします。
※Autorangeボタンについては、過去記事を参照下さい。

Article header library 126509 pic12  1

出力過渡応答シミュレーションの実行

Autorangeで拡大後、最大, 最小値を読み取り、p-p値を算出します。

Article header library 126509 pic13  1

Autorangeで過渡応答部分を拡大

アプリケーションやシステムによって精度の要求は異なるかと思いますが、マウスホールド操作やカーソル追加(attached cursors)を使い、正確な値を出してみて下さい。

出力過渡応答特性は、一般的に位相補償回路や出力コンデンサに依存し、それらの定数によって結果は変動します。

本記事で紹介したようにシミュレーションで簡単に確認する事が出来るので、回路条件を変更しながら、システム毎に最適な出力過渡応答性を得ることが重要です。

最後に

過去2回分の記事と合わせて、DC-DCコンバータの評価項目について4項目を紹介しました。
降圧コンバータのLT8640を例に各機能を紹介させて頂きましたが、これらは昇圧、昇降圧ICにも応用できます。

また、GUIボタンやコマンド操作については、その他アンプやフィルタ回路などでも同様に使えます。
色々なICでのシミュレーションに応用して使ってみて下さい。

まずは下記リンクよりLTspiceをダウンロード!
是非、一度お試し頂ければと思います。

LTspiceのダウンロードはこちら


おすすめ記事/資料はこちら

おすすめセミナー/ワークショップはこちら

関連タグ