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モータ制御で考慮すべき3つの視点 [出張版 APS実験室]

モータ制御の勘所 抑えてほしい3つの視点 「簡単」「カスタマイズ」「適材適所」

様々な電子機器の応用分野で、最も広く使われているのがモータを使用したアプリケーションではないでしょうか。モータは種類も多く、超小型精密モータから、おもちゃに使うモータ、白物家電などで用途の多いブラシレスモータ、自動車用モータ、発電タービンまで扱う電力範囲も幅広いため、それぞれに対応した構成が求められます。モータを使用したアプリケーションは、簡単にできるものもあれば、実現するには課題の多い要求を突きつけられることもあります。それだけ、モータ制御は、奥が深い技術と言えるでしょう。

モータの注目分野の一つとしてあげられるのが、ドローンをはじめとするロボティクス関連ではないでしょうか。ロボティクスで要求されるモータは、これまでの応用分野と違う側面があります。それは、「速く」「正確に」「省電力」です。対象とするロボットによっては、「力強さ」も求められるかもしれません。

今回は、マクニカの豊富なラインナップの中から、モータ制御ソリューションを展開しているベンダー7社の製品をピックアップし、用途に応じた使い分けを、

  • 簡単
  • カスタマイズ
  • 適材適所

の3つの観点で、選択の勘所をお伝えしましょう。

簡単に始めよう

モータ制御といっても、初めてモータを扱うのであれば、どのようにしたらいいのだろう?と疑問に思った時に選びたいのが、PCによる「設定ツール」があるかどうか。

専用のGUIツールがあれば、よくわからなくても、モータは回せます。じっくり勉強する前に、実際に回して、そこから深く掘り下げるのも、エンジニアの嗜みです。

ここでは、無償で提供されている専用ツールを用意しているベンダー3社をピックアップしてみました。開発環境が含まれているものもあり、好みとレベルに合わせて選んでほしいと思います。

Texas Instruments社の統合ソリューション「InstaSPIN™」

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LAUNCHXL-F28027F

InstaSPIN™は、初めてモータ制御に携わるようなエンジニアからベテランエンジニアまで幅広くカバーしている統合ソリューションです。ターゲットのMCUは、同社の製品に対応しています。

このソリューションを使えば、モータのデータシートを確認しなくても、ブラシレスDCモータをすぐに回すことができ、簡単にモータ制御を行うことが可能です。また、自動でモータ特性を把握する機能を搭載していますので、専門知識の浅いエンジニアでも短時間でモータの特性を把握することができます。

詳細はこちら
たった5分でセンサレス・モータ制御を実現する LAUNCHXL-F28027F

Infineon社の「MCE Designer」

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EVAL-M1-099M-C

MCE Designer(無償GUIツール)は、少しモータの知識が必要です。どちらかというと、これから新しくモータを作らなければいけないエンジニアに向いていると言えるので、ある程度モータの特性が理解できていることが前提です。ただ、一度パラメータを入力すると、驚くほどの滑らかなFOC制御を実現してくれます。「静かに」「滑らかに」「力強く」が実現できるのが、Infineonの強みです。

もちろん、設定したコードをモータ制御専用のコントローラに書き込んで、そのままのソフトウェア品質でモータを動かすことができます。

詳細はこちら
わずか1時間でセンサレスFOC制御でモータを稼働させることができる Modular Application Design Kit (MADK)とは?

OnSemiconductor社の「専用GUIツール」

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LV8907UWGEVK

OnSemi社の専用GUIツールは、オンボードに搭載されているマイコンを介して、モータのパラメータや設定内容を評価できるGUIベースのソフトウェアです。ボード自体にマイコンは搭載されていますが、このGUI経由での操作となるため、プログラムを専用に用意する必要はありません。そういった意味で、ソフトウェアエンジニアでなくても、簡単に動かせるシステムになっています。モータ制御ビギナーにはなんともありがたいしくみです。

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3相ブラシレスDCモータを簡単に制御できる LV8907UWGEVK 評価キット

自分仕様にカスタマイズ!

モータ制御は、アプリケーションに最適化することで、その性能を発揮するといっても過言ではないでしょう。ツールだけに頼らず、とことんまでチューニングしたい。そんなエンジニアに最適なのは、ライブラリを提供しているかどうかが非常に重要です。

使い慣れたCPUはもちろんのこと、特にCPUの指定がある場合は、ライブラリの有無が開発成功の鍵を握っているといっても過言ではありません。

ここでは、豊富なライブラリを用意しているベンダー4社をピックアップしてみました。

Analog Devices 社の「ハイエンドMCUソリューション」

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ADSP-CM408F EZ-KIT

ADI社のハイエンドマイコンADSZ-CM408は、Arm® Cortex®-M4の中でも240MHzで動作させることができるハイエンドマイコンを搭載しています。モータ制御は処理が速いほうが有利ではありますが、消費電力も気になるところです。そういった問題をクリアできる数少ないマイコンです。

専用ツールこそありませんが、モータ制御に必要なPWMのライブラリなど、十分用意されています。モータ以外の処理も余裕にこなすのは、アプリケーションを構築する上で心強いですね。

詳細はこちら
モータ制御開発がすぐに始めることができる 「ADSP-CM408F EZ-KIT」評価ボード

Intel社のフラッシュ内蔵の「FPGA MAX® 10」

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Servo Motor Kit

カスタマイズの極みは、何と言ってもFPGA。

CPUでは間に合わないソフト処理もハードウェアで処理することができます。マイコンの便利さを備えつつ、FPGAの柔軟性も両立できるソリューションに、Servo Motorの評価キットが対応しました。FPGAの評価キットでは MAX® 10を使用した定評のある「DE10 Lite」を使用。

フラッシュ内蔵のFPGAは、柔軟性だけでなく、ハードもソフトもデバイス内部に保持できるため、セキュリティ性にも優れたデバイスです。

FPGAのプラットフォームとServo Motor Kitの詳細はこちら
Intel® FPGAで始めるモータ制御。すぐに使えるFPGA開発キットとは?

STMicroelectronics社の「Motor Driver Library」

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STM32 MCU

STMicroelectronics社の強みは、何と言ってもSTM32シリーズをはじめとするマイコンのラインアップが充実していることと、「STM32 CUBE」と呼ばれているコード生成のツールが利用できるところにあります。

同社のモータソリューションはいくつもありますが、ほとんどの評価キットに対応したライブラリを生成することが可能です。省電力で動かすソリューションから、高速に動かすソリューションまで、幅広く扱えるのも同社の強みです。

ブラシレスモータのソリューションの詳細はこちら
低コストで三相ブラシレスDCモータを実現する「STEVAL-SPIN3202」評価ボード

Texas Instruments社の「LAUNCHXL-F28027F」

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LAUNCHXL-F28027F

LAUNCHXL-F28027Fは、TI社のC2000 MCUをベースとするリアルタイムマイコンの位置付けの製品です。32ビットのC28x™ DSP コアを内蔵しているため、とにかくリアルタイム制御に向いています。

統合開発環境はもちろん、ライブラリも提供されています。InstaSPINと併用することで、期待するアプリケーションが最短で構築できるのも、TI社の強みです。

LAUNCHXL-F28027Fの詳細はこちら
たった5分でセンサレス・モータ制御を実現する LAUNCHXL-F28027F

適材適所のモータドライバで、モータの性能を活かす!

今度は、使用するモータにあったドライバを考えてみましょう。

モータと一口に言っても、ブラシ付きDCモータ、ブラシレスDCモータ、ACモータ、サーボモータ、ステッピングモータが主なモータの種類になります。ロボティクスの場合、きめ細かな動きは、サーボモータが使われ、パワーが必要なところは、ブラシ付きDCモータ、ブラシレスDCモータなどが使われるのではないでしょうか。また、精密な位置決めにはステッピングモータも欠かせません。ドローン用のモータは、インダクタが小さく、小型で高速に回転させる必要があります。姿勢制御にはセンサーと組み合わせて、モータの回転制御が不可欠です。

このように、モータの使い方も多種多様なので、それぞれにあったドライバを組み合わせる必要があります。

これからご紹介するモータドライバは、もちろん全て保護回路内蔵。電子回路の中でも、比較的電力が高くなりがちなモータ回路。安全対策も、設計のひとつです。最適な組み合わせを見つけてください。
ここでは、ブラシ付きDCモータ、ブラシレスモータ、サーボモータに対応したモータドライバのラインアップをご紹介します。

Intel® FPGA搭載の多チャンネル対応「サーボモータソリューション」

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Servo Motor Kit

Intel® FPGA搭載のTERASIC社の「DE10 Lite Servo Motor Kit」は、FPGAの機能を生かしたServo Motor Kitです。

通常、PWMのパルスを出し続けるのであれば、マイコンのペリフェラル機能を使うことでも可能ですが、ハードウェアで信号を作り続けることで、ソフトウェアの負担も最小限に抑えることが可能です。リアルタイム性が求められるロボティクスには、最適な組み合わせではないでしょうか。

DE10 LiteとServo Motor Kitの詳細はこちら
Intel® FPGAで始めるモータ制御。すぐに使えるFPGA開発キットとは?

Analog Devices社のIGBT搭載 ブラシレスモータドライバ「ADUM4135EBZ」

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ADUM4135

ADI社のモータドライバ「ADUM4135EBZ」は、モータドライバにIGBTとI/F部にアイソレーション回路を搭載しています。ノイズに強く、高い信頼性が求められる駆動系に最適なドライバです。

ADUM4135の詳細はこちら
産業用モータ制御の信頼性を向上させる Analog Devices EVAL-ADUM4135EBZとは?

OnSemiconductor社の車載対応ブラシレスモータドライバ「LV8907UWGEVK」

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LV8907UW

LV8907UWGEVKは、マイコンいらずであることはご紹介しましたが、対応しているモータの種類が多いのも特徴です。

ロボティクスでもコストが求められる場合、回路を工夫して安価なモータで構築しなければならないときもあります。そんな時に、同社のソリューションな力を発揮します。幅広い電圧レンジに対応しており、センサレス3相ブラシレスDCモータをすぐに評価が可能です。車載関連にも自信を持ってお応えできるソリューションです。

LV8907UWGEVKの詳細はこちら
3相ブラシレスDCモータを簡単に制御できる LV8907UWGEVK 評価キット

Infineon社の白物家電やドローン向けブラシレスモータドライバ「インバータボード」

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EVAL-M1-099M-C

Infineon社の「インバータボード」は、IRMCK-M1-099M-CとMCE Toolにつないで使用します。ブラシレスモータであれば、ほとんどのモータに対応できるので、ワンストップで提供可能です。

さらに、DC12Vから600Vまで幅広いレンジをカバーしているインバータボードは、用途に応じて最適な組み合わせを選ぶことができます。白物家電用モータからドローン用のモータまでまるっと動かせるのが、特徴です。

iMOTIONのインバータボードの詳細はこちら
わずか1時間でセンサレスFOC制御でモータを稼働させることができる Modular Application Design Kit (MADK)とは?

ローム (Rohm)社のブラシ付きDCモータドライバ「BA6951FS-E2」

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BA6951FS-E2

モータは、ブラシレスモータばかりではありません。ブラシ付きモータの方がアプリケーションの応用数的にも多いかもしれません。

そんなブラシ付きDCモータを支えるRohm社のブラシ付きDCモータドライバ「BA6951FS-E2」。安価であることはもちろんのこと、一定した速度で動かすアプリケーションに最適な構成になっています。もちろん保護回路も備えています。

BA6951FS-E2の詳細はこちら
速度制御機能搭載 ブラシ付きモータ向けモータ・ドライバIC BA6951FS-E2

Texas Instruments社のブラシ付きDCモータドライバ「DRV8870」

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DRV8870

TI社のブラシ付きモータドライバ「DRV8870」は、超小型パッケージが特徴です。わずか4.9 × 6.0 mmのサイズに、保護回路はもちろん、ブラシ付きDCモータを駆動するための必要な機能が備わっています。TI社のマイコンと組み合わせれば、InstaSPINから簡単に設定が行えます。

また、TI社のマイコンに限らず、それ以外のMCUでも使用することができるため、小型化が求められるアプリケーションには最適なモータドライバです。

DRV8870の詳細はこちら
すぐにブラシ付きDCモータを評価できる モータ・ドライバ評価モジュール「DRV8870EVM」

まとめ

さて、オススメのモータ制御ソリューションをご紹介してみましたが、いかがでしょうか?

モータの世界は奥が深いといっても、障壁は低くなりつつあります。どのようなアプリケーションに対して、どのモータを使っていくかを見定めることで、ツールやライブラリの助けを借りながらアプリケーションを構築していくことができます。ロボティックスに限らず、様々な場面で活用できるモータ制御。

これを機に、最新のソリューションに少し触れてみてはいかがでしょうか?今後は、より強力なツールが出てくることも期待したいですね。


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APS実験室 [室長] 浦邉 康雄

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[室長] 浦邉 康雄

1995年 半導体商社で自社製品の開発に従事
2001年 SMSC(現Microchip)にて、Ethernet製品のFAEとして幅広い業務に従事
2010年 Altera(現Intel)に入社し、FPGAのFAEに従事
2011年 組み込み系RTOS(eForce)にて、営業技術としてOSの販売やコンサルなどを行う
2015年から現在のAPS実験室室長を務める。
ハード・ソフト・デジタル・アナログ・通信・電源など多岐にわたるコンテンツをエンジニア目線でわかりやすく提供しています。

著書
CQ出版でEthernet関係を中心に、 MbedやCortex-Mコアに関する記事を寄稿

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